• 連載コラム 繁盛旅館への道~売れる商品企画の作り方~
    Column
  • 2019年11月05日

    2012年11月11日 量より質のチカラ

    一昔前のテレビ番組で、ある旅行会社担当者が旅館の下見に行き、出された夕食について料理長に「もう1品付けてくれないか」と交渉している場面がありました。その担当者は「あと1品付けることが仕事」と思っているようでした。

    当時から「時代感覚がズレている」と思いましたが、料理の数を1品増やすことがお客様満足につながる……という時代もあったことは驚きです。

    旅館の料理といえば、「食べきれないほどの量」&「残すほどの量が良い」という時代もありましたが、昨今のお客様すべてがそのような料理を求めているわけではありません。一部に、そのような料理を求める方々もいますが、その数は年々少なくなっており、今後も減っていくと思います。

    そんななか、岐阜県の飛騨高山にある本陣平野屋花兆庵様では、【美味求真会席】~上質の味覚を少しづつ~」という宿泊プランを造成しています。もちろん、団体客対象の企画商品ではなく、個人旅行のお客様をターゲットにしたものです。

    プランは極上の食材で量より質を重視した料理内容です。説明書きにも、「本当に良いもの」にとことんこだわり、調理長と女将が吟味し「美味」を追及した、リピーターのお客様に“最も支持される”花兆庵自慢の会席は“上質を知る”旅慣れた方にこそお召し上がりいただきたい逸品です。と明確に料理内容とターゲットを記載しています。

    美味求真会席のプラン掲載文章には、料理メニューまで詳細に記載する徹底ぶりです。さらに、プランには記載されていませんが、実際に訪れたお客様が料理を食べる際には、あるちょっとした「工夫」がされており、その評価も高いといいます。

    このプランでは通常の会席料理と比べ、原価や手間もかかり板場に負担を強いることになるので、花兆庵様では美味求真会席を、通常の会席料理にプラス4200円の設定で販売しています。それでもお客様がこの宿泊プランを選ばれるところに、時代のニーズが感じられます。

    旅館の料理は量が多くて食べきることができない。旅館の料理は質が悪いので、というマイナスイメージを逆手にとり、料理の量は少ないけれども、質は最良(美味)というコンセプトのこのプランは、発売当初はインターネットおよび直販企画商品だったのです。

    それが旅行会社担当者の目にとまり、今では旅行会社向けの企画商品としても、絶好調な販売を記録しています。

    プランの発売当初は、「量が少なすぎるのではないか?」などの不安もありましたが、実際に販売してみるとリピーター客にも大好評とのこと。

    今では花兆庵様の売れ筋プランの1つになっています。お客様のニーズを顕在化させ、真摯にそのニーズに取り組むことがヒット商品を生む要因になる。花兆庵様の取り組みがそれを実証しています。

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