団体旅行から個人旅行へのシフトと言われ続け、宿の集客スキームが旅行会社重視から直販&インターネット販売重視に変動しています。当然お客様に販売する旅館の「商品」も変化していることは確かです。
もはや以前のように「1泊2食和室で○○円」という商品は、よほど宿のブランド力がない限り売れません。お客様に宿の魅力を伝える企画商品を造成しなければならないのです。
ただ、ネット販売の様々な手法(SEO、SEMなど)ばかりに頼り、結局売上が伸びても利益が追いつかないというケースも、日々のコンサルティング活動においてよく散見します。最近はfacebookさえやっていればなんとかなる!というおかしな風潮も重なり、本来一番力を入れるべき、宿の「商品化」がなおざりになっています。
ネットで売る、旅行会社で売る、直販で売る、という前段階で、お客様に「自分達の宿が何を提供できるか」を明確にした企画商品を造成することが必要なのです。
宿内部の料理、温泉、接客などの“おもてなし”に力を入れることは当然必要ですが、宿の“おもてなし”を体現させ、お客様に伝えていくことが求められているのです。数々の販売強化手法はありますが、そんな時代だからこそ「商品力の再考」が求められているのです。そんな商品力を強化した事例を、これから皆様にご紹介していきたいと考えてりおります。
長野県の上諏訪温泉にあるホテル鷺乃湯様では、「★酒蔵五蔵呑み歩き★源泉湯めぐりプラン」という宿泊プランを造成しています。このプランは上諏訪地域の酒造5軒の飲み歩きと、地域で仲の良い旅館の湯めぐりがセットになった宿泊プランです。
経営者の方は「地域が盛り上がるには旅館単体が利益を上げるのではなく、地元地域にお金が落ちる仕組みが必要だ」ということでこの企画商品を考案しました。
このプランを造成する前でも「お客様が勝手に酒蔵をめぐる」という消費行動はあったそうなのですが、残念ながらそれほどの認知度もなく、酒蔵巡りをされたお客様が「良かったよ~」と仲居さんに話をする程度だったとか。
その声を聞き、「そんなにお客様の評判がいいのであれば、うちの旅館が間に入って酒蔵巡りプランを作ろう!」という話になり各酒蔵との交渉の末、旅館の宿泊プランとして販売するに至りました。
ホテル鷺乃湯様が素晴らしいのは、それを自館だけの宿泊プランとするのではなく、地域の旅館にも使えるように広げたことです。酒蔵巡りと湯巡りができるプランとあって各旅館でもこのプランが大ヒットし、2年目以降は旅行会社の企画商品にも掲載されるようになりました。
この商品のヒットのポイントは「お客様の声」を的確に拾い、より大きな販売網を地域のチカラを巻き込みながら構築したことにあります。お客様だけが、旅館が良いという話ではなく、消費に関わる誰もが喜ぶことが繁盛への道になるのです。