アベノミクスによる円安&株高が進み、株式保有者層の資産価値が上がり、心理的な効果で高額商品の販売回復が百貨店などで見られる、という記事がありました。
旅館業においても、高額価格帯のプランの売れ行きが以前にも増して好調です。簡潔サービス業、とくに旅館やホテルでは、不景気のときは真っ先に影響を受け、好景気の影響が表れるのは最後と言われることも多いですが、適正な商品を適正な販路で販売している旅館は、私の知る限り、その問題はありません。
新潟県岩室温泉の「著莪の里ゆめや」では、ネット&直販経路を適正に整備したことで、高額価格帯プランの売れ行きが絶好調です。
なかでもとくに人気を集めているのが、季節限定のゆめやカウンター席「桜庵」で楽しむ板前料理というプランです。
このプランは夕食を、ゆめやのカウンター席「桜庵」で楽しんでいただくという趣向ですが、プラン表記には「板前がお客様の目の前で料理を仕上げて参ります。板前との会話もお楽しみくださいませ」と記載されています。
実はこのプラン、繁忙時期に仲居さんの手が足りず、料理長に直接料理を提供してもらうことにより、人手の問題を解決しようと造成した商品でした。
しかし、プラン販売後、お客様から予想以上の予約をいただき、ゆめやと「まさかこんなに売れるとは……」と驚いた企画です。
このプランがなぜそこまで好調なのかを分析すると、ゆめやにお泊りになるようなお客様は普段から旅慣れており、少し違った旅館の楽しみ方をしたいのではないだろうか。また、部屋で2人きりで食事をするよりも、板長が間に入ることで料理の知識や、旬の食材などの見識も深めることができるので、「体験」という要素も旅に求めているのではないだろうか、という結論に達しました。
事実、このプランはネット&直販限定の商品として販売を開始したのですが、お客様のニーズに合致したせいか、旅行会社からも「カウンター席プランで予約をお願いします」とよくお電話をいただくようです。
一般のお客様にとっては、「女将と会話をする」と同様に「料理長と会話をする」ということだけでも感動されます。
旅館側が思っている以上に、女将や料理長の存在はお客様にとって「価値のある存在」なのです。
「うちの旅館はカウンター席がないから……」という話ではなく、このプランが売れた本質は、料理長が「あなたのために料理をします」ということです。「料理長からの一品を、料理長がお持ちします」といったコンセプトのプランも可能です。
プロの知識と腕を持つ料理人が包丁を使って料理をする、という当たり前のことをお客様に伝えることにより、結果的に集客につながるという良い証拠のプランと言っても問題ないでしょう。