今年の正月のことです。「青森県大間産のクロマグロが1匹1億5540万円の史上最高値で競り落とされた」というニュースがありました。
昨年付けたこれまでの最高値5649万円の2・8倍で、1㌔あたりだと70万円、握り一貫当たりの原価は4―5万円と驚きの価格です。ご祝儀相場でしょうが、日本人のマグロに対する情熱は、まだまだ冷めそうにありません。街の寿司屋でも「マグロ」を売りにしたケースはよくみかけます。
先日の弊社主催セミナーで、社長に講演いただいた群馬県水上温泉の「源泉湯の宿 松乃井」でも、売れ筋商品に「稀少!天然本鮪寿司&極上ローストビーフ&揚げたて天ぷら食べ放題♪ハーフバイキングプラン」があります。
プランの宣伝文句には「今や稀少となった〝天然本鮪寿司!〟がナ・ナ・ナント!食べ放題♪築地直送『天然本マグロ』を職人が真心込めて一貫一貫握ります。どうぞ思う存分食べ尽くして下さい!」とあります。築地直送の「天然本鮪」をうたった宿泊プランですが、松乃井の公式ホームページのトップページのフラッシュでも、大々的にマグロをPRして誘客に努めています。
実は、このプランを販売する前には、「群馬県でなぜマグロを出すの?」という話もあったようです。ただ、「お客様が食べてみたいと思う素材は何か」と考えたとき、日本人誰もが好むマグロの企画が始められたといいます。
結果は、群馬の山奥ながら、この宿泊プラン目当てに、多くのお客が押し掛け大ヒットです。しかし、だからといって、松乃井で地域の食材を使わないということではありません。現に「ぐんま地産地消推進旅館」にも認定され、料理には地元の野菜などを積極的に活かしています。
当館の地産地消の「地」は、「地方の地」ではなく「地球の地」です。地球上の美味しい食材をお客様に召し上がっていただくことが当館の目標です、という旅館もあります。
地産地消というと、どうしても使い古された感があり、「うちの地元にはお客様から求められる食材はない」といわれる人もいますが、松乃井の地産地消は、「使える地域の食材は使いながら、お客様が食べたい!と思えるような食材は仕入れてでも売る!」という姿勢の「地産地消」です。
こだわりを追及して、狭いマーケットに存在するお客様のみを対象にした客室規模の小さな旅館と違い、松乃井は200室以上の客室を毎日販売していかなければなりません。「小さく絞る」という戦略は不適合です。
大きなマーケットを狙うために、「誰もが食べてみたい!」=「誰もが泊ってみたい!」という企画を考える必要があります。そういった意味で、マグロだけに限らず、「多くのお客様が食べたい!」と思っている素材を料理に活かすことも重要な戦略といえるでしょう。