• 連載コラム 繁盛旅館への道~売れる商品企画の作り方~
    Column
  • 2019年11月05日

    2014年4月11日 業界の流れを活かした施策を

    エースJTBが女優の武井咲さんを起用したCMを流しています。はじめ、このCMの意味がまったく理解できなかったので、ネットで検索してみました。すると、赤いパンフレットのお約束(14年4月からの商品)というタイトルで、エースJTB経由で予約の顧客に対し、「お約束」をしていくという内容のようでした。

    エースJTBのホームページで確認したところ、その「お約束」の内容は、①好評価の宿を厳選する②部屋の広さにこだわる③景色・眺望の良い部屋を用意する④夕食はパンフレット掲載の料理を提供する⑤夕食は温かいものは温かく冷たいものは冷たく提供する⑥主要の観光地では大きな手荷物を配送するか預かる⑦2部屋利用の場合は隣か向かいの部屋を用意する――というものでした。

    旅行を計画中の消費者に対し、上記のような「お約束」を謳うことにより、「エースJTBで予約しよう!」と思わせる一種のブランド戦略も兼ねたCMだとは類推しますが、この「お約束」で果たして消費者の心が動くのか疑問です。そもそも旅行業界を知らない消費者に対して、「エースJTB」と言って話が通じると思っているのだろうかという点が、まず始めの突っ込みどころですが、「お約束」の内容も不可思議です。

    エースJTBで予約された顧客に対して、「良い部屋をご用意しますよ」ということは何となく伝わらなくもないですが、⑤夕食は温かいものは温かく冷たいものは冷たく提供する――の項目などは宿を馬鹿にしているのではないかとも思えてしまいます。エースJTBの対象顧客である「個人客」のケースで考えると、今時、温かいものを冷たく、冷たいものをぬるく出すような宿はほとんどありません。

    逆の捉え方をすると、このエースJTBの赤いパンフレットに「掲載されていない宿」は温かいものを冷たく、冷たいものをぬるく出すような宿なのかと消費者に思われてしまい、かえってデメリットなのではないかとも思えます。

    裏話になりますが、当社のあるクライアント旅館ではこのJTBの「お約束」のため、JTB担当者に「今後、エースJTB経由でご予約のお客様は必ず○○の見える眺望の良い部屋に入れてください」と言われ、その旅館の担当者は「当館で必ず○○の見える眺望の良い部屋は8部屋しかないので、JTBさんに15部屋出しているのを返してもらわないといけないですね」とブロック数をJTBさんの要望に沿って円満に返していただいた、という事例もあります。

    何だかおかしな話になっているなと思いましたが、結果その返してもらった部屋を直販やネットで機動的に販売できるようになったので、その旅館にとってはプラス効果を生んでいます。

    宿側からしてみれば、業界の潮流に流されることなく、しっかりとした考え方を持って対応をしていかなければなりません。

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