2020年東京五輪開催に向け、「観光立国」というテーマが盛り上がりをみせていま す。さらに昨今の円安傾向や、東南アジア諸国へのビザ免除、LCC市場の拡大などにより海外からの誘客が日増しに増えています。
大都市圏やゴールデンルートと呼ばれる観光地以外にも、確実に外国人観光客は増えてきており、全国を出張するなかで、日本人もあまり見かけない地方の土地で海外の個人観光客を見ると、「ここは日本だったよな?」と自問自答してしまうケースもあります。
確実に外国人観光客が増えていくなか、行政や金融機関の方々の一部に「外国人観光客が増えているといっても、宿の受け入れ態勢が整っていないから、積極的に支援できない」という論調も散見されます。宿のコンサルティングをしている立場からすると、宿は「いらっしゃったお客様」に対しての対応力は非常に素晴らしいものがあります。「来ていただいたら最高のおもてなしを届ける」というのが多くの宿の特徴で、英語を話せなかろうが、文化の違いでトラブルが起ころうが、自力で解決し、ノウハウを宿に蓄積されています。「日本人のお客様で言葉が通じてもトラブルになる方もいらっしゃるので、そんなケースに比べると言葉が通じないぐらいどうってことないわよ」とおっしゃられる頼もしい女将さんの声も多く聞かれます。
そんななか、集客強化に向けて宿が行うべきことは、やはりインターネット販売の強化です。(海外の団体客を誘客するのはインターネット対策だけでは不十分ですが)。ただ、海外からの誘客強化を目指し、いきなり自社ホームページに英語やそのほかの言語のコンテンツを掲載する前に、海外で展開しているネットエージェントの活用が望まれます。海外のネットエージェントと聞くと、対応がいい加減で、ノーショウ(予約のキャンセルも入れずに当日現れない客のこと)対策も十分でないことが多いので付き合いたくない、という声も聞かれます。しかし、よほどのブランド力と認知力を持った宿は別として、海外のお客様が日本の宿を探す際には、やはり「海外のネットエージェント」を使って検索されます。
まずは、効率的にその「検索の網」にひっかかり、海外のお客様に認知してもらう必要があります。それには、公式HPを多言語対応化することも重要ですが、それ以前に「海外のお客様に自らの宿の存在を探してもらう」という点からも考えていかなければなりません。
一方、ノーショウ、ギャランティード・リザベーションの問題など、業界として解決しなければいけない点も多くあることは確か。その解決策を他人任せにするのではなく、自らの経験のなかで、ノウハウとして進化させていくことが肝要です。これまでも、そうやって宿泊産業は自助努力で永続してきました。時代の転換点に来ている今こそ、もう1歩の経営努力が必要となってくるでしょう。