最近、当社クライアント旅館の予約動向を俯瞰的に眺めてみると、「ベジタリアン料理に対応できますか?」というお客様からの質問が、日本人、海外観光客問わず多くなってきたように思えます。宿側にとっては、日本の料理には旬の素材を用いたものが多く、多様な食材を職人の腕で芸術品までに高めた日本料理を食べてほしいという想いがあると思いますが、「お客様のご要望に応えられないのもいけない。でも、実際に野菜ばかりの料理だと味気ない」という声も現場から多く聞きます。
私も、アレルギーなどならまだしも、野菜だけ食べる人生など味気ないと思ってしまいますが、「ベジタリアン」という食生活が市民権を得てきていることは実感しています。 「ベジタリアン」と一口に言っても、ランクがあるそうです。代表的なものでいうと、ラクト・オボ・ベジタリアン(Lacto-ovo-vegetarian)は乳卵菜食で、乳製品と卵は食べます。ラクト・ベジタリアン(Lacto-vegetarian)は乳菜食者で、乳製品は食べます。チーズは乳製品だが、牛を屠畜して胃を取り出して消化液を集めたレンネット(凝乳酵素)を使って作られたものは食べません。オボ・ベジタリアン(Ovo-vegetarian)は卵菜食者で、鳥や魚介類などの違いは問わず卵は食べ、なかには無精卵に限り摂る人もいます。ヴィーガン(Vegan) は純粋菜食者で、完全菜食主義者。倫理的、環境的な理由で乳製品、蜂蜜などを含む動物性食品を一切摂らず、革やウール製品、そして娯楽など、食用以外の動物の使用も排除します。
繰り返しになりますが、私はベジタリアン料理を推奨してるわけではありません。むしろ、リサーチしていても、意味はわかるけれどもあまり共感できないというのが本音です。人は生きている限り、動物であれ植物であれ「他の命」をいただいて生きているわけであり、その本質は肉も野菜も同義であると個人的には考えております。
当社クライアントのゆめやではベジタリアン対応をしているというので、「菜食派のための精進会席コース~ベジタリアンのお客様にも」という宿泊プランを造成していただきました。料理メニューはゆめやの公式ホームページに掲載していますが、前菜からデザートまで野菜を使ったメニューになります。今までは海外からのお客様や、ベジタリアン志向のお客様からのご要望があったときにこうした料理を出していたそうですが、今後は積極的にPRしていこうという話になりました。
宿の現場からは、ベジタリン料理以外でも「グルテンフリー(主に小麦粉を使わない料理)」なども、海外のお客様からのご要望で増えてきているという話を聞きます。お客様のご要望を安請け合いするのではなく、旅館ならではのベジタリアン料理という発想に立ち商品開発を行えば、新しいお客様への道が開けることでしょう。