昨年の秋からコンサルティングをさせていただいている「オーベルジュ箱根フォンテーヌブロー仙石亭」さんの業績が絶好調です。こちらの施設様はもともと、料理も施設もおもてなしも素晴らしい施設様ですが、もう一段階の成長をということで当社にご依頼をいただきました。
業務遂行にあたり、オーナーシェフにいろいろとお話をうかがっていると、やはりオーベルジュと謳っておられるだけに「料理」へのこだわりは並々ならぬものをお持ちでした。ただ、残念なことに顧客から要望があれば対応するというオペレーションであり、プラン数も少ないというのが現状でした。
私もそうですが、旅館コンサルティングに従事するまでは、「宿泊に際し、宿に要望を言う」という発想そのものがありませんでした。つまり、宿側から「こういうこともできます」というアプローチをしないと、お客様は「自分の求めているものとは違う」と思っても、そもそも問い合わせをしないという現実があります。
そんな話をしつつ、稼働状況や原価計算をしながら、既存のオペレーションを乱さない範囲で、宿泊プランを造成いただいたところ、昨年12月も過去最高売上という結果が出ました。
そのなかでも、「【軽めのお食事】フルコースお肉orお魚を選ぶライトディナーコース」というプランがとくに反響が大きかったです。このプランは、フォンテーヌブロー仙石亭の支配人の方と会議をしている際に「女性のお客様から、量が多いという意見がある」という話を聞いて、そこから造成いただいた宿泊プランです。そのニュアンスが伝わるように宿泊プラン文章に、「『お食事は軽めの方がいい』というお客様のためのライトディナーコースです。メイン料理をお肉料理かお魚料理からお選びいただき、通常のフルコースディナーより2、3品少ない料理になっております」との記載を入れていただきました。
すると予約の備考欄に「フルコースは食べ切れるか心配だったのでこのプランにしました」という、まさにこちらの意図に合致するお客様が増えました。さらには、奥様が肉嫌いでご主人が魚嫌いという食の好みが異なるご夫婦などからの予約もいただいきました。
このほかにも、対象顧客を想定し造成した宿泊プランが、その意図通りに受注するケースや、こちらの想定を超える発想でのご予約をいただき、結果的に全体の業績も向上したという流れになっています。特定の広告に費用を投下する販売促進もあれば、自社の想いを宿泊プランにのせてお客様に発信するという販売促進もあります。「思い」は思っているだけでは伝わらず、「カタチ」にして「発信」しないとお客様には届きません。
「売れる、売れない」という発想に基づいた宿泊企画造成も必要ですが、「思いを届ける」という視点でも考え、実行に移すと新しい道が開けることでしょう。