世界自然遺産「知床」にある「しれとこ村」の姉妹館「国民宿舎 桂田」では、今年から「オホーツク海を見ながら夕食を」の知床炉端焼きプラン(2食付)という宿泊プランを造成しました。
知床は季節波動が大きく、6-10月までは客室稼働率が100%近いにもかかわらず、冬季は逆に20%程度まで落ち込む過酷な観光地です。しれとこ村は通年営業、国民宿舎桂田は夏の期間のみ営業、というスタイルで長年経営をしていました。
通年営業のしれとこ村は、料理長が知床の海の幸を、「ありえないほどの安い原価」で仕入れ、素材を活かした料理をお客様に出しています。
一方、国民宿舎桂田は、夏期間のみの営業で、料理人が定着せず、毎年料理人を募集するのに苦労していました。
そんななか、食事スタイルの改革という話が出て、「手の込んだ料理はしれとこ村に任せて、国民宿舎は素材勝負&料理人いらず(調理の手間を極力かけないスタイル)で勝負しよう」という話になりました。今夏から、宿の前にプレハブの食事処を設けて、前述の宿泊プランの販売を開始させました。
プランは、ウトロ港で揚がるオホーツクの新鮮で安心安全な魚介の数々、北海道・知床ならではの味覚とボリュームをお楽しみください、という内容。
夕食の一例で「2015年夏新規OPEN!オホーツク海を一望できる食事処で『知床炉端焼き』」を紹介すると、つぶ貝に蛸、平貝の魚介類とじゃがいも、トマト、かぼちゃ、ピーマン、パプリカの野菜などを使ったカスベホイル焼きに鹿肉ソーセージやラム肩ロース焼き、焼きおにぎり2個という内容です。
プラン造成の途中、「カニをつけなくても大丈夫か」という話もありましたが、知床に来るお客様は、既に北海道の他の観光地で宿泊し、そこでふんだんにカニを食べているので、逆にカニをつけない方が新鮮なイメージを出せると判断し、販売に踏み切りました。
ドキドキの販売スタートでしたが、蓋をあけてみると、予約も絶好調で、我われの心配も杞憂に終わり安心しました。
今後は旬のカキやイバラガニ、ケガニ、タラバガニやウニなどの食材を、旬の時期に合わせてオプション販売して単価アップ&魅力アップをはかってもらう予定です。
内容を見て、こんなメニューは料理ではない、という意見も確かにあるでしょうが、知床で本格和会席を出してもお客様のニーズにそぐわないところがあります。
宿の目の前の海で、シャチやイルカを見ることができ、部屋の窓からはシカやクマが歩いているようすがわかるような宿では、繊細さよりも「豪快さ」が求められています。
どの観光地でも、知床と同じようなことができるわけではありません。ただ、料理人の手配が難しいというマイナスの条件をプラスに変えることに可能性を感じることができます。