先日訪問したクライアント旅館で、夏の売店増売キャンペーンが始まっていました。例年、7月の小学校終業式から8月いっぱいにかけ、お子様連れのファミリー層でにぎわう旅館です。
今年は、館内お宝さがし(館内にシールを隠し、それを探してもらう)や玄関前のスーパーボールすくい、チェックイン時に花火プレゼント(花火をする会場は売店を奥に進んだ特定スペース)、ビールやかき氷などをハッピーアワー(午後3時―5時30分)を設け販売、特定商材を買うとちょっぴりプレゼントがもらえるキャンペーンなどを、並行して展開しております。
現在のところ、お客様の評価もよく、夏休みに突入した期間の日次売上も順調に推移している、という嬉しい報告もありました。
こちらの旅館では消費税増税後、例年通りの集客人数を記録しても売店部門の売上が下がってしまう、という状況でした。「旅行に行く」ことで消費が精一杯で、宿では追加のお金を一切払いたくないというお客様が増えたことも事実です。
旅館業では、宿泊売上より売店売上の方が多いというのは稀なケースでしょう。宿の業績を向上させるためには、売店部門の強化より、まずは宿泊部門を強化すべきというのは当たり前のことです。
しかし、宿泊部門を強化し、一定の稼働率に達してしまうと、それ以上お客様を泊めることは不可能になりますので、館内の付帯売上(とくに売店)を強化することが必要となってきます。
ただ、ここにも以前よりもはるかに「競合施設」が増えてきています。我われの税金で地域活性化を狙って全国に山のように造られている「道の駅」などは最たるもので、なぜもっと「民業圧迫なのでは」という声が上がらないのか不思議です。ロードサイドや主要観光地には素晴らしいお土産物屋さんがたくさんオープンしています。
純粋に商品の品ぞろえなどでは、館内によっぽどの敷地面積を持つ宿以外は、それらのお店に勝つことはできません。ただ、それらのお店と比べ、圧倒的に優っている部分は「お客様の滞在時間」です。夕方の午後3時にチェックインし、翌日の午前10時までいるお客様に対し、「ただ売店で物を買ってください」というお願いをするのではなく、「イベント」として楽しんでいただくと、消費がともなってきます。
以前の団体旅行のように、饅頭詰合せ1人10セット、というような客層は減っており、個人旅行のお客様が多いなか、単純に「魅力ある商品」をそろえるというだけではお客様には響きません。
それぞれの宿の規模や、対象客層を想定し、「商品+イベント(体験)」を行っていけば、冒頭の事例のように良い結果が生まれるケースもあります。
「ただでさえ忙しい夏にそんなことできません」という声もあるでしょうが、「ちょっとしたこと」で消費を促す。その試みが実り多き夏になることを願っております。