先日、東京のホテルに久々に泊まって、その利益重視の姿勢に驚かされました。宿泊したのは、全国にホテルを展開する某ホテルチェーンです。宿泊料金が以前の1・4倍程度になっていたのは、昨今のインバウンドブームを踏まえると仕方ないことでしたが、驚いたのはサービスのダウングレード具合でした。
以前は、チェックイン時のフロントで入浴剤が無料でもらえたものが、有料で100円になったり、部屋に無料のミネラルウォーターが置いてあったのが、有料で150円になっていました。
さらに、アメニティにボディタオルがあったのも、無くなっていました。宿泊料金を上げてさらにコスト削減に走る姿には、心底驚きました。外国人観光客が多いせいか、シャンプー&コンディショナー&ボディーソープの「香り」が、以前よりも強烈になったのも印象的です。
需要(お客様の泊まりたい、というニーズ)よりも、供給(ホテルの数)が少ない状況になると、「ここまでやるんだ…」ということを実感しました。
しかし、こういった需給バランスのとれていないときに、企業側の視点のみに立った経営をしていると、次の「波」(景気後退期)に突入したときに苦労します。
今回の事例は「東京」という一大ビジネス都市だからこそ可能なのであって、これを地方の旅館がすると、大きなしっぺ返しにあうことでしょう。
当社のクライアント先旅館でも、当該地域に相当数のインバウンド客が来店し、地域の旅館すべてが順調というケースもあります。
そのときに考えないといけないことは、「宿の経営努力」も影響しているが、「地域」としての魅力があってこそのブームも存在するということです。マイナス発想は好きではありませんが、一世を風靡したブームのような現象が過ぎ去ったときの破壊力はすさまじいものがあります。
昨今のリアルエージェントやドライブインの衰退具合を見ると、少し時代から外れたり遅れてしまうと、過去の栄光は何だったのだろう、と思うくらい落ち込みます。
危機感をもって経営に臨んでいる場合と、好調で惰性経営する場合では、前者の方が圧倒的に新しいサービスや商品が開発されます。経営は「絶好調な時ほど危ない」というのは、歴史が証明しています。
経営を続けていくための利益を得ることは、もちろん必要ですが、良心をなくしてしまい、利益のみに走ってしまうと、結果的に大事なお客様を失ってしまうことにも繋がりかねません。
設備投資や、おもてなしの改善によって単価を上げることを否定はしませんが、冒頭の事例のように、単価を上げてサービスをダウンさせる、というようなことを続けていくと、いずれ破綻の道に至ります。
好調なときこそ、「次」を見据え、お客様とよい向き合い方を心がけ、実行に移さなければなりません。