先日、あるクライアント旅館で、予約課の皆さんから「来年4月以降の予約リスクエストも多くいただいているのですが、他の旅館さんはどうですか」という質問をいただきました。この旅館は、インバウンド絶好調のエリアにあり、細やかなおもてなしが外国人観光客にも評価され、近年急激にインバウンド比率を上げているところです。
日本人の予約が入ってから実際に宿泊するまでの日数「リードタイム」は、1ヶ月前程度でしたが、ネットの発達により、どんどん長くなってきています。
正月やお盆、花火などの特殊な日は、泊まられた当日に、その翌年の予約を入れてお帰りになることもあるので、特殊な繁忙日のリードタイムは長くなりますが、一般的に日本人が来年の予約を国内の宿に入れることは稀です。
ただし、これが海外旅行などになると、航空機手配やスケジュール調整など、さまざまな要因により、リードタイムが長期になります。これだけ外国人観光客が日本に多く来るようになると、人気エリアの人気宿のリードタイムは必然的に「長く」なってしまいます。
結果的に、繁忙日(もっというと繁忙月)などは、予約のリードタイムの長い外国人観光客に、先に全ての客室を抑えられ、日本人の受け入れが難しくなるというケースも出ていることでしょう。
それで、「良し」とする宿はそれで良いでしょうが、冒頭の旅館では、来ていただくお客様を拒むわけではないが、リピーターなどを含む日本人のお客様も大切にしていきたい、という考えがありました。
そんなときに、存在する「在庫」を全てインターネットにサイトコントローラーなど通じて出してしまうと、結果的に外国人観光客のお客様ばかりになり、日本人のお客様からは、「○○旅館はいつ電話しても満室で、一体いつなら泊まれるんだ」というお叱りを受けてしまいます。
現実的に、この旅館は年間客室稼働率が90%を超えていますので、そのようなお声をリピーターから頂戴するとのことでした。
そういった事情もあり次年度からの在庫調整は可能な状況にありますが、今後は細やかな在庫調整をしていこう、という話になりました。
また、同時に客室をブロックしておきながら売り切れないリアルエージェントも削減しよう、と下期からの在庫減の話も進めていっていただいております。
マーケットの状況が変わると、手法も変わるのは当たり前ですが、「どういう道」を選んでいくのかは、宿側にイニシアチブがあります。ただ、このインバウンドブームに流されると、ブームが去った後は、強烈に痛いメにあいます。
売れているときだからこそ、経営が順調な時だからこそ『誰向けの宿になっていくのか』ということを考え、対処法をトライ&エラーで実行していかないと、流れにのまれて終わってしまいます。