海外のホテルに泊まると、ほぼ100%デポジットをチェックイン時に取られます。この夏利用したホテルも、チェックイン時にクレジットカードでデポジットを取られ、チェックアウト時に「返金は2週間後です」、と笑顔で言われました。
部屋の備品が盗まれたりすると、そこから強制的に徴収されるのでしょう。また、ホテルのキャッシュフローをよくするための一時金なのでは、とも疑ってしまいます。
デポジット(deposit)は「保証金」と訳され、容器やサービスを利用する際に必要なカードなどを借りる際に支払う「預かり金」のこととあります。盗難や部屋の備品を壊さないように、という抑止力は働くことでしょうが、なかなか日本の旅館でここまでやっているケースは少ないように思えます。
顧客に対する接し方が「性悪説」に基づいている西洋の契約社会を表す仕組みですが、グローバルスタンダードはやはりデポジットが必須であると同時に、予約時に事前カード決済を強く求められます。
日本の「旅館」おいては、「宿に泊まる」ということが、個人との「信用」や「社会的常識」が前提にあり、旅行代理店などを介さない直接予約時に事前に入金を促すという文化はあまりないように思えます。一部の宿では、宿泊代金の一部事前入金必須というケースもありますが、そこまでしている宿は少ないでしょう。
しかし、これだけ日本人以外のお客様も旅館に泊るようになると、「日本ではコウだから」という話はグローバルで揉まれている旅行者には通じません。
良かれと思って提供している予約の仕組み(事前入金なしで、宿泊当日支払い)を逆手にとり、「カード番号を聞かれてないから、宿に連絡をしなくてもキャンセルOK」と考える一部旅行者は残念ながら存在します。
同様に、デポジットという仕組みがないがゆえに、宿から枕などが盗まれたり、畳にキャスターの傷が深々とつくという被害を、全国の宿で聞いたことがあります。
そんな時、これらの被害のうちいくつかは「デポジット」を取れば、宿が泣き寝入りしなくともよいのかもしれません。海外のホテルのデポジットルール(宿泊料金×○×%等)があるのかもしれませんが、日本ではまだ「デポジット」という仕組み自体が整っていない状態です。
もちろん、リピーターに対して「デポジット」を求めると、「私を信用していないのか」という話になりかねないので、お客様の選別は必要になり、オペレーションが煩雑になる可能性はありますが、健全な業界発展として制度の普及を目指していくべきだと考えています。
「おもてなし」という、ぼやっとした話を推し進めるのではなく、こういった「宿がデメリットを受けない仕組み」づくりを、もっと国をあげて取り組むべきステージに入ってきたと思います。