先日、あるクライアントの旅館で、「露天風呂付客室が木造建築で湿気が多く“臭い”とのクレームが度々あるので修繕したが、なかなか改善されないので、自信を持って売れない」という話があり、実際に露天風呂付客室の部屋に試泊してみました。
19時ごろにチェックインし、部屋に入ると確かに木造の独特の臭いがしました。ただ、木造建築の臭いとしては、特段クレームを言うほどの激しいものではありませんでした。部屋には空気清浄機も用意されていたので、スイッチを入れると凄まじい異臭が発生しました。原因は「部屋の元々の臭い」ではなく、空気清浄機そのものと判断し、窓を開け空気を入れ替えると通常の状態に戻りました。
そして、浴衣に着替えて、部屋の露天風呂に入り(源泉掛け流しの良い温泉です)、部屋に戻って、少し暑くなってきたので、部屋の冷房をつけました。すると、また強烈な「臭い」がしてきました。「まさか」と思って冷房の風に鼻を近づけると、こちらからも強烈な臭いが発生していました。お客様が「臭いが気になる」とおっしゃった原因は「木造建築による経年劣化の臭い」ではなく「その部屋に置いてある空気清浄機や空調の問題」だったのです。
この体験を、翌日の会議で報告すると、空調関連は夏前に社内のスタッフで清掃した、と言うことでした。空気清浄機は機器自体何年前に購入したのかも分からない、というので、空調機器は専門業者に清掃させるか、取り換える。空気清浄機は新しい機器を導入する、というようにしていただきました。
お客様からのアンケートやクレームで言われたことは、一部クレーマーまがいの悪質なものもありますが、「起こっている事象(今回でいうと臭い)」を表現されているものもあります。
しかし、お客様は「宿泊しての感想」をおっしゃるので、お客様が指摘する「原因」が真実かどうかは別の話です。それらを一つひとつクリアするには「旅館をわかっているスタッフが体験してみる」という一点につきます。
お客様がおっしゃることを気にして、自信を持って部屋を売れないということが経営にとってのマイナスであると同時に、お客様が指摘したことを、さらに別のお客様が指摘する、というようなことでは、アンケートの意味はありません。もちろん「大浴場が遠い」など、設備的にはどうしようもない案件もありますが、今回の「臭い」のような解決できる問題もあります。
「百聞は一見にしかず、百見は一体験にしかず」というように、その「意見」ばかりに目を向けるのではなく「自分で体験してみる」という大切さを改めて認識しました。
「問題」はそのまま放置し続ければ「問題」ですが、解決しようと思えば「課題」となり「解決」の道筋が立つものなのです。そのために必要なことは「体験」であり、それに勝る解決策はありません。