10月1日から「地域共通クーポン」の事業がスタートし、各宿では大忙しの状況かと思われます。
「地域共通クーポン」紙版は宿に届き、それに1枚1枚、使えるエリアのハンコを押し、有効期限を記載する(ハンコor手書き)必要があります。
あるクライアントでは6千枚の「地域共通クーポン」が届きました。それを1枚1枚処理することは、もはや「いじめ」の状況です。政府が打ち出した「はんこ廃止」の方針とは、まったく逆行する状況です。「縦割り110番」が稼働していたら、間違いなく通報されてしまいます。
もちろん、自社予約のお客様に「地域共通クーポン」を配るのは当然の話ですが、OTA(オンライン旅行会社)経由予約のお客様にも「地域共通クーポン」の手配をするのは大きな手間です。
業界全体が人手不足のなか、過大な負荷を現場に掛けている認識がOTAにあるでしょうか。「パートナーのお宿様と共に成長する」と言うのであれば、こんな時こそ宿に来て、クーポンにハンコを押す手伝いをするぐらいの対策を考えるべきではないでしょうか。
実際、クーポン1枚発行ごとに、OTAに発行手数料を請求できるぐらいの業務負荷があります。業界全体として、OTAに発券手数料を求めていきたいものです。
先日、長野県・上諏訪温泉で、クライアント先と昼食でも利用する地元で人気の蕎麦屋を訪ねました。「地域共通クーポン」について聞くと「手間が掛かる」と、本事業に参加しないことを早々に決めたそうです。
クライアントも、「あの蕎麦屋さんのようなお店でクーポンが使えると、ご宿泊のお客様にもご案内しやすいし、地域活性化にもつながるのだけど」と残念そうでした。
ただ、その蕎麦屋さんにすればクーポンは「手間が掛かる」し「分からない」ことが多いのでしょう。「キャッシュフローが回らなくなる」というのも大きな要因です。
中小の小売店や飲食店などは、コロナ禍で大きなダメージを受けています。「地域共通クーポン」が使われても、入金までのキャッシュアウトが心配でしょう。
多くが現金仕入で商売をしており、売上が発生しても、それがすぐ使える現金でなければ商売は回らない。
金融機関のつなぎ融資を受けるところも少なく、受けようとしても手間が掛かる。GoToトラベル期間中だけの施策なので参加できない、というのが本音でしょう。
旅館のように、通常から2―3カ月遅れで入金される旅行会社の「クーポン」に慣らされている業種は、売上後払いでも許容できる範囲ですが、そうでない業種にとって、現金が滞ることは死活問題につながります。
「地域共通クーポン」の理想は素晴らしいと思いますが、理想だけで商売は回っていかない。制度設計した方々に、ぜひ今回の反省点を踏まえ、次の施策につなげていってほしいと切に願います。